【車の板金】叩き出しの作業は具体的に何をしている？
自分で行うことは可能？

更新日：2023-03-30

車のボディにへこみが入ってしまった場合、修理方法を調べていると「叩き出し」という言葉が目に入るかもしれません。

叩き出しとは、車の板金作業の一種であり、車のへこみを裏側からハンマーで叩いて元通りにする修理方法です。機械を使わず、熟練のされた職人の手によって行われます。ただ、修理費用の相場や修理期間が分からず、依頼しにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、叩き出しに必要な修理費用の相場や、おおよその修理期間について目安を紹介します。叩き出しの修理に関する基本知識を深めたい人は、ぜひ参考にしてくださいね。

叩き出しの作業はどのようなことをしている？

叩き出しと聞いても、あまりピンとこない人も多いでしょう。まずは、叩き出しとはどういった作業なのか、詳しく解説していきます。

板金の叩き出し作業とは？

叩き出しは、別名「打ち出し」とも呼ばれる板金加工技術の一種です。一般的には、厚さ1〜6mm程度の金属板をハンマーで叩いて立体を作り出す作業を指します。車業界においては少し意味が異なり、車についたへこみを内側からハンマーで叩き、元に戻す修理方法のことを意味します。

【ハンマー】

引用：楽天市場

【あて板】

引用：楽天市場

叩き出しには、「ハンマー」と「あて板」を使用します。ハンマーは求める形状に合わせて金属・木製・ゴムなどさまざまな素材が使われており、ヘッド部分の大きさや形状も異なります。あて板とは、へこみの裏側にあてがってハンマーの衝撃を和らげ、板金をサポートする道具です。

叩き出しの仕上がりは、職人の技術力によって大きく左右されるため、どの修理業者に出しても同じ仕上がりになる訳ではありません。ボディを叩いて成形するだけとシンプルな工程に見えますが、とても難易度の高い作業であることを覚えておきましょう。

叩き出しが有効な場合は？

叩き出しであっても、すべてのへこみに有効という訳ではありません。叩き出しが有効なへこみは下記の通りです。

• 裏側から叩き出せるへこみ
• ボディの平らな面についたへこみ
• 軽くへこんでいるへこみ

まず、叩き出しは人の手で行うものなので、手が入る箇所についたへこみにのみ有効です。例として、ボンネットやフェンダーは叩き出しできますが、ピラーやドアは難しくなります。

また、バンパーの角についたへこみのように、カーブ形状や角ばっている箇所についたへこみは、叩き出しが難しくなります。修理業者によっては、叩き出しを断られる可能性があることを留意しておきましょう。

そして、叩き出しは軽いへこみにのみ有効です。職人の手によって行われる作業なので、叩き出しできる範囲に限界があり、どうしても大きなへこみに対応するのは難しくなります。特殊な塗装をほどこしていたり、希少性の高いパーツを使用したりしていて「どうしても叩き出しで修理してほしい」という場合は、修理業者に相談してみましょう。

車の状態によっては塗装や部品交換が必要になる場合も

単純なへこみのみがついている場合は、叩き出しの作業のみで済みますが、ボディの状態によっては、塗装やパーツ交換となる場合があります。へこみがついた場合は、塗装の状態までしっかり把握しておきましょう。

ボディの塗装は、鉄板に塗る「色の層」、最も表面の「クリア層」で構成されています。クリア層だけ剥がれている場合は、叩き出し作業の後にコンパウンドで磨くだけで済む場合がほとんどです。反対に、色の層まで剥がれてしまった場合、下記のように2段階にわけて修理を行います。

• 色の層まで届いている傷
• 鉄板まで損傷している傷

それぞれどういった修理を行うのか、詳しく見ていきましょう。

色の層まで届いている傷の場合

ボディの色の層まで傷が入り、塗装が剥がれて下地が見えている場合、再塗装を行います。そのため、下記のような作業工程になるのが一般的です。

①塗料を落とす
↓
②叩き出し
↓
③再塗装・乾燥

一般的に広く使われている塗装色の場合は、標準的な塗装作業のみで済みますが、パール系の塗装になると少し厄介です。パール系の塗装はクリア層・色の層にプラスしてパールの層が加わった3層になるため、作業時間と塗装料がかさむことになります。さらに色を合わせることが難しく、熟練の職人であっても色味がズレる可能性があることを留意しておかなくてはいけません。

鉄板まで損傷している傷の場合

ボディが深くへこんでいる、原形を留めないほど破損してる場合は、叩き出しや再塗装だけでは修理できません。無理に叩き出しで直そうとしても、完璧な元の状態に戻すのは難しく、工賃もかさんでしまいます。このような場合は、パーツ交換になることが多く、叩き出しは行いません。

パーツの在庫がある場合はすぐに交換可能ですが、在庫がない場合は納品を待つか、中古のパーツから探すことになり、修理にやや時間を要します。修理費用にプラスして取り寄せにかかる運賃もプラスされるため、ダブルで費用が発生することを覚えておきましょう。

叩き出しが必要な場合の費用相場は？

車のへこみを叩き出しに出したいけど、修理費用の相場が分からず依頼しにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。修理業者ごとに金額設定は違うものの、納得感を持って修理に出すために、相場感を知っておいて損はありません。

よくぶつけてしまいがちなパーツごとに、修理費用の相場をご紹介します。

バンパーは前後にせり出したパーツなので、とくにぶつけやすいパーツです。一般的に販売されているバンパーは樹脂製のものが多く、ヒートガンを使って温めながら叩き出しを行います。バンパーの下部から手を入れやすいため、比較的修理しやすく、修理費用もそこまでかかりません。

またボンネットの場合は、パーツが大きくて平らなので、同じ衝撃でもへこみが広範囲に入りやすいと言えます。へこみが広範囲にわたっている場合は、大規模な修理かパーツ交換が必要です。

対して同じようにぶつけやすいドアは、叩き出しの手が入らないため、脱着と分解の作業を行う必要があります。ドアの脱着・分解は簡単そうに見えてかなり複雑な作業なので、その分工賃と作業時間がかさみ、修理費用も高額になります。

軽いへこみ程度であれば、外側から引っ張り出す「デントリペアキット」を使用したほうが早く直せる場合があるため、修理内容と修理費用のバランスを見ながら検討しましょう。

修理完了までどれくらいの時間がかかる？

車を修理に出す時に気がかりなのが、修理期間ではないでしょうか。修理期間によっては車を預ける必要があるため、代車を依頼したり、車を使わないスケジュールを組んだりしなくてはいけません。そのためにも、あらかじめ修理期間の目安も押さえておきましょう。

修理内容ごとに、どの程度の修理期間が必要になるのか、詳しく解説していきます。

叩き出しのみで修理が済むような軽いへこみの場合、修理期間は短期間で済む場合がほとんどです。修理業者によっては即日対応している場合があるため、急ぐ場合は事前に問い合わせておくと安心です。

反対に、叩き出しに塗装が加わったり、パーツ交換になったりする場合、修理期間は長くなります。車を長期間預ける場合、修理業者によっては、代車の貸し出しを行っていない場合もあり、注意が必要です。あらかじめ修理期間を把握したうえで、車を手配するようにしましょう。

自分で叩き出し作業をすることはできる？

板金用ハンマーやあて板は通販で販売されており、誰でも購入可能です。修理費用を抑えるためにも、修理業者に依頼するより自分で修理したいと考える人も多いのではないでしょうか。

もちろん、初心者であっても叩き出し作業を行うことは可能です。ただし、ボディの鉄板は厚さ1～数mm程度しかなく、叩き出しに慣れていない初心者がハンマーで叩いてしまうと、へこみを押し出しすぎて穴を開けてしまう危険があります。ボディに穴が開いてしまうと、修理業者に依頼せざるをえなくなり、かえって修理費用が高くつくため、おすすめできません。

あくまでも初心者が行う叩き出しは、「へこみをキレイに直す」のではなく、良くて「現状よりいい状態にする」「目立たなくさせる」状態にしかならないことを頭に入れておいてください。

プロの修理業者に依頼すれば、持ち込んだその場で修理してもらえる場合が多く、修理にかかる時間と手間を節約できます。プロの技術と道具を使って塗装を直すので、仕上がりは自作と比較にならないほど美しく仕上がるでしょう。ただやはりそれだけの技術を要するので、自分で修理するよりも費用は高くなります。

修理の仕上がりを重視したい人や、失敗するリスクをとりたくない人は、修理業者に依頼しましょう。

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叩き出しは、板金作業の一種で、職人の手で行われる修理方法です。通販で道具を購入し、自分で叩き出しすることも可能ですが、完璧にキレイな状態に仕上げるのはかなり難易度が高いと言えます。仕上がりの美しさを重視するのであれば、修理業者に依頼しましょう。

ただし、修理業者を選ぶには、見積もりをとって修理の内容を確認したり、修理費用の相場感を把握したりする必要があります。修理業者とのやり取りに慣れていない人にとっては、何かと難しく面倒に関してしまうものです。修理依頼にかける手間や時間を省くためにも、修理業者の比較サイトを使うという方法も便利です。

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