2022-04-01
水素自動車の仕組みとは?電気自動車やガソリン車と何が違うかも解説
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「水素自動車の仕組みが知りたい」と考えていませんか?
水素自動車は水素を燃料として走る車で、環境にやさしく燃料資源が枯渇する心配もない次世代エコカーです。
本記事では、水素自動車の仕組みやメリット・デメリットを解説します。
「水素自動車ってどんな仕組み?」「エコカーとして注目を集めているけど、実際どんなメリット・デメリットがあるの?」と疑問をお持ちの方は多いでしょう。
水素自動車は電気自動車やガソリン車に台頭する次世代エコカーとして、各自動車メーカーが莫大な研究開発費を投じて量産化に成功した自動車です。
現在、一般ユーザーが購入できるモデルは限られていますが、水素ステーションの設置数も徐々に増えインフラ整備も進みつつあるため、近い将来私たちにとっても身近な自動車となることが期待されます。
本記事では、水素自動車の仕組みや製造メーカー、メリット・デメリットについて詳しく解説します。水素自動車に関する基本知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてくださいね。
水素自動車の仕組み
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水素自動車は最近開発された次世代車の1つとして広く知られていますが、実はその歴史は古く、日本で初めて水素燃料エンジンが開発されたのは、今から約50年以上前のことです。
それから、欧米を中心とした各メーカーは「究極のエコカーは水素自動車である」として技術開発に注力してきました。
結果としてハイブリッド車に続き、日本の自動車メーカーが世界に先駆けて量産化に成功し、2014年にトヨタが世界初の量産型セダン「MIRAI」を発売したことで一般ユーザーも購入できるようになりました。
まずは、そんな水素自動車の定義、仕組みについて詳しく解説していきます。
水素自動車の定義
水素自動車とは、ガソリンの代わりに水素を燃料として駆動する車のことです。水素自動車は、以下の2つに分類されます。
- 水素を直接燃焼させてエネルギーを作る「内燃機関車」
- 水素と酸素を取り込んで発電する燃料電池を搭載した「水素燃料電池車」
内燃機関車とは、ガソリン・ディーゼルエンジンに搭載された内燃機関(※)を改良し、水素を燃焼させる水素エンジンを搭載した車のことです。
内燃機関とはガソリンなどの燃料を燃焼させて得た燃焼ガスを用いて直接機械を動かす原動機のことで、水素自動車とは、一般的には内燃機関車のことを指します。
一方、水素燃料電池車(FCV)は、水素と空気中の酸素を燃料電池に取り込んで発電させてモーターを回す車です。水素で発電する仕組みを用いているため水素自動車と呼ばれることもありますが、燃料電池車として別枠で扱われることがほとんどです。
水素自動車は既存のガソリン車が燃料としてガソリンを補給することと同じく、水素ステーションで水素を燃料として補給して運動エネルギーを作り出します。
エンジン内で水素が燃焼しているため走行中は水蒸気が排出されますが、ガソリン車のように二酸化炭素は発生しません。
また、大気汚染の原因となる窒素酸化物の排出も少なく、環境面で非常に優れています。クリーンな車として近年普及が望まれていますが、水素ステーションの設置をはじめとしたインフラ整備の課題があり、ガソリン車に台頭する位置付けまでにはいたっていないのが現状です。
水素で車が動く仕組み
水素自動車の仕組みは、内燃機関車と燃料電池車で大きく異なります。
内燃機関車では搭載された水素エンジンに水素と空気を直接取り入れて燃焼させることでピストン運動を起こし、車の走行に必要な推進力を生み出します。
一方、燃料電池車は燃料電池に水素と空気中の酸素を取り込んで電気を作り出し、その電気でモーターを回して走行するための動力を得ます。燃料電池は普通の乾電池とは異なり、水素と酸素を化学反応させて電気を作る発電所のような装置です。
この点が既存の電気自動車との大きな違いでもあります。
出典:トヨタ MIRAI
上述の通り、水素自動車が運動エネルギー生成の過程で排出する物質は水蒸気のみです。
二酸化炭素や窒素酸化物などの環境汚染を招く物質は排出しません。
また、動力源である水素は地球上に限りなく存在しており、化石燃料(ガソリンなど)のように枯渇する心配がない点も、高い評価を得ている理由の一つです。
水素自動車を作っているメーカー・車種
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水素自動車を作っているメーカーというとトヨタが有名ですが、実はトヨタ以外にも数々のメーカーが水素自動車の製造を行っています。
以下に代表的なメーカーを一覧で紹介します。
【水素自動車を作っている主要メーカー】
- トヨタ
- ホンダ
- マツダ
- BMW
- ヒュンダイ
- ポピリム
世界に先駆けて水素自動車の量産化に成功したのは、トヨタとホンダです。
しかし、当初は市販せず官庁などへのリース販売に限定していました。これは開発にあまりにも莫大な費用がかかり、開発費用を回収できるだけの販売価格を設定できなかったためです。
また、市販化にはさまざまな技術的課題があり、ライバルである電気自動車の躍進もあってか水素自動車は一時影を潜める不遇の時代を送ることとなりました。
しかし、その中でも各メーカーは地道な開発を進め、現在はトヨタ・ホンダ・ヒュンダイの大手自動車メーカー3社が世界で唯一水素自動車の市販モデルを販売しています。
以下で、トヨタ・ホンダ・ヒュンダイが販売する市販の水素自動車モデルの特徴を簡単に紹介します。
【トヨタ】
モデル名 |
MIRAI |
新車価格 |
710万円~ |
中古車価格 |
140万円~(参考:楽天Car) |
特徴 |
2014年に世界初の量産型水素自動車(燃料電池車)として発売。2020年12月には第2世代の発売にいたる。
水素一充填あたりの走行距離は約750km〜約850km。最高出力174psの新型FCスタックを備えるなど、世界最高レベルの高出力を実現している。 |
【ホンダ】
モデル名 |
クラリティFUEL CELL(フューセル) |
新車価格 |
783,6万円~ |
中古車価格 |
ー |
特徴 |
2016年に発売された量産型セダンタイプ。
曲線美が目を引くエクステリアデザインと、最高出力177psの高出力駆動モーターが織りなす力強くてなめらかな走行感が魅力。
一回あたりの水素充填時間は約3分程度、水素一充填あたりの走行距離は約750km。
(※2020年6月から一般ユーザー向けのリース販売が開始されたものの、現在は注文受付を終了している) |
【ヒュンダイ】
モデル名 |
NEXO(ネッソ) |
新車価格 |
776,8万円~ |
中古車価格 |
ー |
特徴 |
韓国の大手自動車メーカー「ヒュンダイ(ヒョンデ)現代自動車」が製造するFF式SUV車。
直線を基調とした近未来的なフォルムで、駆動モーターの最高出力は約163ps、FCスタックの最高出力は約129ps。
水素一充填あたりの走行距離は約820km。
(現在日本での取り扱いはないものの日本語の公式サイトがあるため、将来的には日本での販売を視野に入れている可能性がある) |
水素自動車のメリット・デメリット
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市販モデルも販売され、一般ユーザーにとっても身近な存在となりつつある水素自動車ですが、具体的には既存のガソリン車などと比べてどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
本項では、次世代エコカーである水素自動車のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
水素自動車のメリット
各メーカーがこぞって長年にわたり研究開発を続けてきただけあり、水素自動車には数々のメリットがあります。
本項では、数あるメリットの中から代表的なものを紹介します。
環境にやさしい
水素自動車のメリットの代表例といえば、二酸化炭素などの有害ガスを排出しないことでしょう。燃料の燃焼時に窒素酸化物が発生しますが、排出量はガソリン車に比べて非常に少ない量です。
水素自動車は、もともと石油精製時に大量発生する水素ガスを有効活用する試みとして開発が始められました。水素は石油資源とは違い、水や天然ガスからほぼ無限に作り出すことができるため、燃料枯渇の心配がない点が強みです。
また、政府は水素社会の実現に向けた方策として、水素コストを従来エネルギーと同程度の水準まで低減することを目標としています。現在の水素価格は高い水準にありますが、各種コストが削減されれば将来的にはガソリンと同じような価格で提供されることが期待できます。
燃料補給に時間と手間がかからない
充電に長時間を要する電気自動車とは異なり、水素自動車の充填時間は1回あたり約3分程度と非常に短時間です。
また、1回の水素充填で走行できる距離は約650km〜750kmとガソリン車と同等の水準で、長距離移動にも適しています。水素ステーションが着々と設置されていることも踏まえ、今後水素自動車の利便性はより一層高まることが期待できます。
走行音が静か
水素自動車に搭載されているモーターは、駆動時の音が小さいのが特徴です。ガソリン車のような排気音やエンジンの振動がなく、静かで快適な環境下で走行できます。静音性が高いことは、ユーザーに対しさまざまなメリットをもたらします。
【走行音が静かなことによるメリット】
- 車内の会話がはっきり聞こえる
- 乳幼児が走行音で起きる心配がない
- 周囲の環境に配慮した走行ができる(閑静な住宅街など)
一方で、水素自動車のあまりに静かな走行音に対し味気なさを感じる方も一定数います。最近ではそのような方向けに、あえて加速音が出るよう設計されたモデルも登場しています。
水素自動車のデメリット
次に、水素自動車のデメリットについて見ていきます。
水素自動車の代表的なデメリットとして挙げられるのは以下の2点です。
それぞれ詳しく解説していきます。
価格が高い
水素自動車はガソリン車やハイブリット車、電気自動車などの一般的に普及している車に比べると、車両価格が高い傾向にあります。
これは、以下の点が影響していると考えられます。
- 燃料となる水素の貯蔵、搬送にコストがかかる
- 製造コストが高い
水素の貯蔵には十分な強度を持つ高圧タンクが必要ですが、条件を満たす水素燃料タンクはいまだ研究開発段階です。
また、燃料電池には採掘・精錬のコストが高いレアメタルが使用されており、ハイブリッド車と水素自動車(燃料電池車)では約300万円程の価格差があるといわれています。
水素ステーションが少ない
水素ステーションは2021年2月時点で全国に137箇所(整備中を含めると162箇所)ありますが、設置場所は都市部に集中しており、ガソリンスタンドほど整備されていないのが現状です。これには、水素ステーション建設にかかるコストがガソリンスタンドの4〜5倍と莫大な規模である点が影響しています。
水素自動車と電気自動車の違いは?
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水素自動車と電気自動車の大きな違いとしては、以下が挙げられます。
- 搭載されている電池の機能
- 航続距離(燃料の充填1回あたりの走行可能距離)
- 燃料の補給方法
- 燃費
電気自動車には蓄電池が搭載されていますが、水素自動車(燃料電池車)には燃料電池が搭載されています。
両者の違いは発電機能の有無で、燃料電池には発電機能がありますが、蓄電池は電力を蓄えるのみで発電機能はありません。電気自動車は自足的に動力源となる電力を生成することができないため、定期的な充電が必要です。
また、自立運転ができないことから、電気自動車の航続距離は、燃料電池車が約650km〜750kmであるのに対し約400kmと短いものとなっています。水素ステーションが少ないという課題はありますが、1回の充填で長距離を走ることができる点を鑑みると利便性においては水素自動車に軍配が上がるといえるでしょう。
燃料の補給については、電気自動車はステーションだけでなく家庭での充電も可能です。
一方、水素自動車は専用の水素ステーションでしか補給はできません。ただ、水素自動車はガソリン車と同じく1回あたりの充填にかかる時間は約3分程度と短いですが、電気自動車の場合家庭用充電でフル充電までに要する時間は一晩ほどです。
急速充電であっても約10分〜1時間程度かかるため、充電に一定の時間がかかることは避けられないでしょう。
燃費においては、電気自動車が圧倒的に有利です。水素自動車、電気自動車、ガソリン車の燃費(目安)を比較すると以下の通りとなります。
【水素自動車・電気自動車・ガソリン車の燃費比較(1kmあたり)】
|
燃費 |
水素自動車(トヨタ MIRAI) |
約6~7円 |
電気自動車(日産 リーフ) |
約3~4円 |
ガソリン車(トヨタ カローラG-X“PLUS”) |
約9円 |
上表の通り、燃費においては電気自動車が突出して優れています。とはいえ水素自動車の燃費性能もガソリン車と同等程度となっており、経済的には問題ない水準といえるでしょう。
電気自動車、水素自動車(燃料電池車)を選ぶときは両者の違いを認識したうえで適性を見極めることが大切です。
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この記事では、水素自動車の仕組みやメリット・デメリットについてお話ししました。
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よくあるご質問
Q1:水素自動車の仕組みは?
A:水素燃料電池車(FCV)は、燃料電池に水素と空気中の酸素を取り込んで電気を作り出し、その電気でモーターを回すことで動いています。
ガソリン車と比べて大気汚染の原因となる窒素酸化物の排出も少なく、環境面で非常に優れています。
Q2:水素自動車を作っているメーカー・車種は?
A:2022年3月現在、トヨタ、ホンダ、ヒュンダイの3社が水素自動車を開発しています。
車種はトヨタからMIRAI、ホンダからクラリティFUEL CELL、ヒュンダイからNEXOが発売されています。
Q3:水素自動車のメリット・デメリットは?
A:水素自動車の大きなメリットは、環境にやさしいという点です。
水素自動車はガソリン車と比べて、走行時に環境破壊に繋がる窒素酸化物の発生が少なく、二酸化炭素などの有害ガスを排出しません。
また、その他にも、走行音が静かで、燃料補給に時間と手間がかからないというメリットもあります。
しかし、その一方で車両の価格が高く、水素ステーションが少ないというデメリットがあるがあります。
Q4:水素自動車と電気自動車の違いは?
A:水素自動車と電気自動車の大きな違いは、発電機能の有無です。
水素自動車に搭載されている燃料電池には発電機能がありますが、電気自動車に搭載されている蓄電池は電力を蓄えるのみで発電機能はありません。
そのため、航続距離に大きく影響があり、水素自動車が約650km〜750km、電気自動車の航続距離は約400km程度の走行になります。
参考サイト
TOYOTA MIRAI(参照日:2022-02-27)
https://toyota.jp/mirai/
HONDA クラリティ FUEL CELL(参照日:2022-02-27)
https://www.honda.co.jp/auto-archive/clarity/fuelcell/2021/webcatalog/type/type/
Hyundai NEXO(参照日:2022-02-27)
https://www.hyundai.com/jp/nexo?gclid=Cj0KCQiA3-yQBhD3ARIsAHuHT67CwcDtP-sq9DW2f3cu7C3hfaNvFpQ7Q5kOxgm3wMy6CUCEhF00UPwaAi6hEALw_wcB
FCV・水素ステーション事業の現状について 経済産業省(参照日:2022-02-27)
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/suiso_nenryo/pdf/024_01_00.pdf
水素自動車はどのように動く?メリット・デメリットも合わせてチェック(参照日:2022-02-27)
https://carnext.jp/magazine/article/hydrogen-vehicles/#:~:text=%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E3%81%AB%E6%90%AD%E8%BC%89%E3%81%95%E3%82%8C,%E3%82%92%E7%99%BA%E7%94%9F%E3%81%95%E3%81%9B%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
FCV(水素自動車)は環境に優しい?優しくない?気になる点を徹底調査!(参照日:2022-03-07)
https://www.yhg.co.jp/taiyo33/column/%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E3%81%AF%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AB%E5%84%AA%E3%81%97%E3%81%84%EF%BC%9F%E5%84%AA%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%84%EF%BC%9F/
水素自動車・電気自動車・ガソリン車の燃料価格比較!どの車の燃料が一番安い?(参照日:2022-03-07)
https://www.car-hokengd.com/saving-ijihi/fuel-compare/
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